12月22日は、「長野県駅伝の日」と認定してもらいたい。22日、京都市で開催された全国高校駅伝でまず女子(5区間21・0975㌔)代表の長野東が2年ぶり2度目の優勝を飾ると、続く男子(7区間42・195㌔)代表の佐久長聖も初の2連覇達成で4度目の日本一となった。ちなみに佐久長聖が2度目の全国制覇を成し遂げた17年は長野東が2位、長野東が初優勝した22年は佐久長聖が2位。長野県勢の男女同時優勝は初めてで、全国に「駅伝王国長野」の名を存分に知らしめた。
18年連続出場の長野東は、「先行逃げ切り」の鉄則どおりのV奪回劇だった。勢いをつけたのが1区の真柴愛里。昨年は腰痛でメンバーを外れた2年生はこの1年で安定感を増し、最長6㌔のエース区間に登場した。最も内側の位置取りから常に先頭を視界に捉えながらレースを進め、最もきつい上りの残り200㍍で勝負に出て先頭に立ち、16、17年に先輩の和田有菜(現日本郵政グループ)が獲得して以来となる区間賞。がっちりと握った主導権をあとの4人も手放すことなく首位のまま県最速となる1時間7分27秒でフィニッシュした。
「追う者の強み」の言葉があるように、どの競技でも追い上げる側の方が心理的にも楽だが、2区以降は盤石の一人旅だった。共通だったのは、後続との差、コースの特徴を考えながら、追われる重圧を跳ね返し、最良のペース配分で走るクレバーさ。タスキを受けた直後に差を縮められても慌てることなく、区間終盤にガス欠となった後続との差を戻していた。横打史雄監督は「力を出し切ってくれた。優勝に値する走りをしてくれた。1、2区は想定以上。3区はよく粘ってくれた。後半は単独走に強い二人がいい走りをしてくれた」と称えた。インターハイの上位入賞者など大砲はいなかったが、トラックよりロードに強い適材適所のメンバーは束になって金色に輝く栄光の証を手に入れ、「メダル獲得」の目標を達成。創立50年の節目に花を添えた。
初代の玉城良治監督(現日体大監督)が川中島ジュニアランニングクラブの竹内万祐監督らの協力を得て礎を築き、20年から横打監督が引き継いだ。犀川河川敷にある手づくりのクロカンコースには今年も地元有志がつくった派手目の応援メッセージが掲げられた。留学生が多く走った3区を託された窪田舞主将以外の4人が残る。地域に根付いた日本一強い公立校の新たな挑戦が楽しみだ。
27年連続出場の佐久長聖は、タフな走りでアンカーまでもつれ込んだ接戦を制し、より難易度の上がる連覇を達成した。前回V経験者で今夏のU20世界選手権に出場した浜口大和と佐々木哲の2枚看板、昨年ゴールテープを切った篠和真を1,3,4区の主要区間に置き前半で主導権を握る展開をもくろんだが、ライバルも手ごわく、7区(5㌔)の石川浩輝は首位・大牟田(福岡)と2秒差の2位でタスキをもらった。すぐ一騎打ちの展開となり、互いに相手の呼吸を読み合いながらの並走に。トラック勝負の可能性も膨らみ始めた3・6㌔過ぎ、5000㍍13分59秒86のタイムを持ち地力で勝る石川が一気に突き放して区間賞もゲット。2時間1分33秒の同校歴代2番目の好タイムで24秒差をつけて勝利。高見沢勝監督は「女子で同じ長野勢が優勝してプレッシャーもあったが、選手たちが素晴らしい走りをしてくれた。ホッとしている」と語った。
石川は埼玉県出身。佐々木が2位だった全国中学大会3000㍍の決勝に残ったが17位で決して目立った存在ではなかった。1、2年時は大事なところで故障してメンバー入りを逃し、3年生となり台頭。夏合宿を経て持ち前の高い能力を発揮し始め、高見沢監督から「勢いのある選手」と認められ、大事なアンカーに指名された。厳しい寮生活の中で自身を律し、コツコツ3年間かけて強くなる長聖の伝統を受け継ぐ男が、最初で最後の都大路で人生初のスポットライトを浴びた。これで4本目となる西陣織のゴールテープを持ち帰る。正門を入ると駅伝部のこれまでの活躍を顕彰する石碑があるが、空いていたひと区画が埋まることになる。