第96回都市対抗野球第2次予選北信越大会は3日目の28日、長野オリンピックスタジアムで準決勝が行われ、長短13安打とつながった信越ク(長野市)は8-4で伏木海陸運送(高岡市)を倒し、2019年以来6年ぶり東京ドームにあと1勝とした。1―1と追いつかれた直後の3回に3番・樫山、4番・山崎の連続適時打などで4点を勝ち越し。6回に内野失策から2点を返されたものの8回は6番・永井の左越え本塁打などで2点を追加すると9回は樫山の右越え本塁打で駄目を押した。守っては4回から2番手として登板した佐渡が要所を締める粘りの投球でリードを守り抜き、前回覇者を撃破。きょう29日の決勝はIMF BANDITS富山(富山市)と対戦する。
▽準決勝
信越ク
014 000 021―8
010 002 001―4
伏木海陸運送
(信)酒井大、佐渡―斎藤
(伏)西納、西川、山田-幸明
🉀幸明(伏)永井、樫山(信)
信越クが強攻策で主導権を引き寄せた。1―1と追いつかれた直後の3回。26日の1回戦はわずか4安打と湿っていた打線が9人攻撃でビッグイニングを築いた。
先頭の9番・斎藤が内野失策で出塁すると続く藤沢は死球で無死一、二塁。もらったチャンスで酒井監督は「(今季は)足の速い選手が増えた。併殺はない」と送りバントのサインは出さなかった。2番・伊藤が初球から打って出て三遊間を破って満塁とすると樫山も初球攻撃で中前に打ち返し2点を勝ち越し。山崎は追い込まれながら6球目の外角変化球に食らいついて左前に落とし4点目。鮮やかな3連打で伏木海陸のエース西納をKOすると敵失でもう1点加え、5-1とした。
4点のリードを奪うと継投は早めだった。加入4年目で就任2年目の酒井監督はスクールパートナーでも3年の経験があり、ワンプレーで流れが変わる都市対抗予選の怖さは十分承知しているだけに、4回から切り札・佐渡に託す慎重な采配。佐渡も期待に応え、6回を99球7安打3失点(自責点2)。毎回走者を背負いながらも冷静に高低、内外角を使い分けながら丁寧に1個ずつアウトを重ねた。
佐渡は日大三、明星大を経てBC信濃でプロを目指し3年間プレーした後に移籍して4年目。NTTの関連会社でガスの遠隔検診の仕事をしながら野球を続けている理由は「東京ドームに出ていない。そのために一年間やっている」だ。日本選手権は2年前に出場しているものの社会人の最高峰の舞台・都市対抗は未経験とあって、懸ける思いは強い。
4月のJABA長野大会は3戦全敗。だが、徐々にチームは浮上し、オープン戦ながら企業チームと互角に渡り合えるようになった。佐渡は今季から樫山、中道とともにコーチ兼任で指揮官を支える者として、「取り組んでいることが形になってきて、少しずつ変わってきている」とチームの成長を実感。この日の好機での集中力、ピンチでの粘り強さにその一端がかい間見えた。
先発左腕の酒井大、2回に先制打を放った「7番・DH」の原以外の出場メンバーは東京ドームを知らない。酒井監督は「長野なんでここ。チャンスある時に獲るだけです」。地元オリスタでの復活Vに意欲を見せた。
(スポーツライター・高地浩志)