第106回全国高校野球選手権長野大会は第12日の24日、セキスイハイム松本スタジアムで準決勝2試合が行われた。雨のため開始が90分遅れた第1試合は長野俊英が5-4で赤穂にサヨナラ勝ちを収め、初の決勝に進出。第2試合は長野日大が10-0の6回コールドで小諸商を圧倒し、2009年以来の頂点まであと1勝とした。初の長野市勢対決、71年以来となる北信勢同士の顔合わせとなった決勝は27日に同球場で午前10時プレーボール。
俊英は劇的勝利で初Vまであと1勝
▽準決勝
赤 穂001 002 010-4
長野俊英100 002 101X-5
赤 黒宮-福島
俊 千野、伊東-屋本大
白熱のシーソーゲームを制したのは俊英だった。初回に先制も3回に並ばれ、6回は内野失策から無死一、三塁のピンチを招くとエース伊東颯が救援も2点の先行を許す嫌な展開。だがその裏、5番・屋本大雅、6番・浅沼葵玖の連打から1死二、三塁を築くと伊東の中前2点打で振り出しに戻す粘り腰。7回は1死から右中間二塁打で出塁した4番・羽片一磨を浅沼が左中間適時三塁打で還し、4-3と勝ち越し。8回は内野失策で追いつかれたが、ファイティングポーズは取り続けた。
9回、伊東が2死一塁を踏ん張るとその裏、1死から屋本大が左翼線二塁打で出塁すると浅沼は勝負を避けられ四球。1死一、二塁で登場した7番・山上留玖はこの日3四死球と犠打で無安打だったが、仲間たちから「お前が決めろ」と送り出された。「低めを打とう」と意を決して赤穂・黒宮と対決すると初球をセンター返し。「落ちてくれ」と願いながら走りだすと白球は中前で弾み、屋本大が本塁に滑り込み、サヨナラ勝ち。殊勲の背番号4は「ランナーが還ってきて良かった」と価値ある一撃(記録は二塁打)を振り返った。
ミスもあったがつなぎの野球で逞しく取り戻し、第1シードの都市大を倒して勢いに乗る赤穂をうっちゃり、初の決勝進出。終盤の好機で輝いたのは4番から8番までの3年生とあって、4度目の夏を指揮する小林正具監督は「やっぱり3年生。凄いですよ。きちっと結果を残してくれている。準決勝まで進んだ春の経験を生かしている。大したものですよ」と絶賛した。第4シードから挑んだ戦いは、16強だった過去最高を一気に塗り替え、62年の創部以来初の聖地まであと1勝。主将の羽片は「2年半、甲子園のためにやってきた」と仲間たちの熱い思いを代弁した。
日大は6回コールドで15年ぶりVに王手
▽準決勝
長野日大 321 103-10
小諸商 000 000-0
(6回コールド)
日 山田-堀内
商 東海林、武田、依田、土屋、田村達-油井
🉀山田(日)
大黒柱が戻れば、さらに強い。日大は21日の東海大諏訪との準々決勝3回途中、腰を痛めて退いた山田羽琉が本来の「4番・投手」で出場。フル回転の大暴れでけん引し、昨夏の4回戦で8-9と敗れた小諸商に6回コールド勝ちで雪辱。21年以来の決勝に駒を進めた。
まずは初回1死二、三塁で登場した第1打席だ。3球ファウルで粘った末の6球目を巧みなバットさばきで中前に運ぶ先制の2点適時打。すかさず二塁盗塁を決めると6番・小山泰斗の内野安打で三塁へ。次の田村快斗の2球目で大きくリードを取った一塁走者の小山泰が捕手からのけん制球を誘って挟まれる間に本塁を陥れ、3点目を記した(記録は野選)。これでエンジンがかかり、3回の第2打席は逆風にも関わらず左中間芝生席に高校通算10号のソロアーチ。8点差に広げなお無死満塁の6回の第4打席は、中前に2点適時打を打ち返し計5打点、リードを10点とした。
投げては3回までに4安打を浴びながらも2併殺などで切り抜け、最終6回は3人でピシャリ。変化球で打たせて取る持ち味を発揮して、81球で零封した。
幸いにも軽症だったたこともあり、前日23日夜に、松橋将之監督から「任せたぞ」とスタメンを告げられた。「やってやるぞ」と燃え、痛み止めは飲んだがテーピングはせずに出場。「最初は不安だったが、痛みなんか感じなかった。責任が大きい中でしっかり仕事ができた。(準々決勝は)助けてもらったんで今度は助ける番だった」。エースで4番らしい活躍で、4強止まりだった昨秋、今春を乗り越える勝利の原動力となり、胸をなでおろした。
中野シニア時代は松商学園に進んだ丸山、桜井らと一緒に全国舞台を踏んだが2,3番打者で投手ではなかった。「厳しい環境で本気で甲子園を目指したい」と日大に進み、大きく成長した山田。俊英との決戦も打って、走って、投げまくり、09年以来の頂点に駆け上がる。