第96回都市対抗野球第2次予選北信越大会は最終日の29日、長野オリンピックスタジアムで決勝が行われ、信越ク(長野市)は4-1でIMF BANDITS富山(富山市)を逆転で倒し、6年ぶり25度目の本大会出場を決めた。1点を追う7回に敵失で追いつくと8回は3番・樫山瑠外野手の右越え本塁打で勝ち越し、6番・永井敦士外野手の左中間2点本塁打でリードを3点に広げた。守っては先発の酒井大輝が1点を失った3回途中から救援した佐藤孝輔が追加点を阻むと終盤2イニングは3番手の佐渡俊太が無失点で締めた。東京ドームで開催される大舞台は8月28日に開幕する。
▽決勝
IMF BANDITS富山
001 000 000―1
000 000 13X―4
信越ク
(I)五味、岩崎、元木、高根沢―大川
(信)酒井大、佐藤、佐渡―斎藤
🉀樫山、永井(信)
逆転の信越だ。3回に先行を許すと、走者を出しながらあと一本が出ない苦しい展開が続いたが、終盤に底力を発揮した。まずは7回だ。下位で1死一、二塁を築くと1番・藤沢は強い投ゴロ。併殺かと思われたが2番手右腕の二塁送球が外野に抜ける失策となる間に振り出しに戻した。こうなると流れは変わる。8回、3番手右腕から先頭の樫山が初球攻撃で勝ち越しソロ。1死一塁からは永井も初球を仕留め左中間2ランだ。豪快な一発攻勢で4-1とリードすると9回は佐渡が3人で締め、左腕トリオ継投のトリを飾った。
BANDITS富山は企業チームではあるが2018年創立で全国経験はまだなく決勝進出も初。一方の信越クはこれまで都市対抗に企業チーム時代に14度、99年にクラブ化してからも10度出場してきた。勝負どころで重ねてきた歴史の差が明暗をつくった。
オリスタでの歓喜のシーンの後は練習グラウンドへ。ノンアルコールビールで祝杯をあげると、「勝つことが仕事」と記された旗をバックに記念の集合写真を撮影した。
企業チーム時代のOB以外で初めて指揮を執る酒井監督は2季目でのタイトル奪回。長崎・壱岐島出身で日本文理大から所属したスクールパートナーは3年目で休部となる憂き目に遭いながら、球縁を頼ってやってきた新天地で妥協せずにナインと向き合う不屈の男だ。「投手が頑張ってくれた。自分の仕事をしてくれた」と1失点で耐えた投手陣を勝因に挙げ、「きょう勝ったんで、(信州に)来た意味ができました」と喜びを語った。6年ぶりに乗り込む社会人の最高峰は、ほとんどが東京ドームを知らない。「どれだけ(課題を)突き詰めることができるか。やることやって、暴れまわりたい」。働きながら白球を追う者の代表として、次に目指すのは10年ぶりの初戦突破。28歳の青年指揮官はフレッシュな顔ぶれを率いて新たな歴史をつくりにいく。
(スポーツライター・高地浩志)