仙台六大学野球の春季リーグで二人の県関係4年生選手が輝きを放った。長野吉田から東北大に進んだ植木祐樹外野手は打率・441で初タイトルとなる最高打率賞、佐久シニア出身で東北学院大の小林三邦遊撃手(鶴岡東出)は12盗塁で初の最多盗塁賞を獲得。ともにベストナインに名を連ね、確かな存在感を示した。
長野吉田出身・植木(東北大)は首位打者
植木はハイレベルの文武両道で積み上げてきた取り組みを最終学年で初タイトルにつなげた。名門・東北大の経済学部に在籍しながら白球を追いかけ、3年秋から主力となると今春は主に「3番・右翼」でけん引。全10戦で34打数15安打(2二塁打、1三塁打)と打ちまくり、ただ一人4割越えとなる打率・441のハイアベレージを残した。文句なしで最高打率賞を射止めてベストナインに選ばれ、「獲れると思ってなくて、うれしい」と振り返る。
小中とも軟式野球チームに所属し、高校も地元の進学校・長野吉田へ。広角に打つ技術に加えてパンチ力も兼ね備え、1年秋から4番に座った。「自主性を大切にする、高校の3年間で基礎を学べた」。二人一組になっての走塁研究など、選手同士で考え合いながら技量を上げ、勝利を目指す活動が肌に合い野球への興味が増した。3年夏はコロナ禍で甲子園につながらない代替大会。2回戦で前年覇者・飯山に敗れたものの、プロ注目の本格派右腕・常田の速球に力負けせず意地の中前打1本を放った。それでも「不完全燃焼」。学ぶ楽しさもエネルギーに超難関国立大に現役合格を果たすと迷わず野球部の門を叩いた。
各学年10~15人程度の東北大野球部は学生主導。高校時代の延長ですぐ溶け込めたが、仙台六大学リーグは幾多のプロ選手を輩出している東北福祉大を筆頭にレベルの高さは全国屈指だった。「140㌔は当たり前」の剛腕が目白押しの投手たちを攻略するため「試行錯誤」を続けた。体づくりの必要性を感じてボディビル部に在籍し、こちらは2,3年とインカレ出場。焼き肉店に加え、スポーツジムでインストラクターのアルバイトも掛け持ちし、密度の濃い学生生活を送ってきた。成果の一端で、1㍍77の身長は変わらないが体重は入学時から10㌔増の76㌔に。逞しくなったのに加え、磨きをかけたのが「駆け引き」。常に「考えて打席入る」ことを大事にした上で、狙いを外されても対応できるように、より引き付け、コンパクトに打ち返し、安打量産につなげた。
既に就職も決まり、本格的にプレーするのは今秋で最後。「チームの勝ちに貢献したい」。春の5位からAクラス入りを狙う伝統校の安打製造機は、集大成のシーズンをにらみながら、さらなるレベルアップを期している。右投げ左打ち。
佐久シニア出身・小林(東北学院大-鶴岡東出)は盗塁王
小林は新たな勲章を得た。1年春からベンチ入りし、主将の重責も加わった今春は「1番・遊撃」と攻守で引っ張った韋駄天だ。12盗塁で初のタイトルホルダーとなり、2年秋以来となる2度目のベストナインに選出された。「盗塁王を初めて獲れて前回より納得できる」と達成感をにじませた。
各年代で大舞台を経験してきた野球の虫だ。TDK千曲川で俊足の好打者としてならした父の薫陶を受け、小学時代は浅間スポーツ少年団で全日本学童軟式野球大会に出場し、中学時代は佐久シニアで全国選抜を経験。高校はシニアの先輩を追いかけて鶴岡東(山形)に進み、2年夏、交流試合となった3年夏と甲子園の土を踏んだ。内野手兼投手だったが東北学院大では内野の要で勝負してきた。
三拍子そろった好選手。50㍍6秒2で「足にも自信がある方だった」。昨年、巨人、西武で活躍したOBの星監督が就任するとチームで「走塁に力を入れてきた」ことも転機となった。出塁につなげる努力も実を結んだ。「追い込まれてから、当てて(ファウルに)逃げる」技術を磨き、今春はもぎ取った四球が11個で三振は3個だけ。簡単にアウトとならずに相手バッテリーに重圧をかけ、打率・353と気を吐いた。
春は3位だった。主将として「秋は神宮に行く。目指すのは優勝だけ。仙台大、東北福祉大をどう倒すか」。卒業後も「野球を続けたい」と願う自らの未来をも切り開くため、2強撃破を期している。1㍍75、73㌔。右投げ右打ち。