少年硬式野球の千曲ボーイズが19日、千曲市戸倉創造館で、日本一経験を持つ指導者に学ぶイベント「名将から君へ」を開催した。2010年の発足以来、次代を担う中学生球児の育成に努めてきた原知久監督が県野球界のレベルアップを願って初めて企画。第1部でこれまでOB4人が進学している全国区の強豪・浦和学院高野球部の前監督、森士さんが「甲子園を目指す野球少年に必要なこと」と題して講演。第2部では原監督を交え、来場者から事前に集めた質問に答えるトークショーを行った。
森さんは東洋大卒業後、上尾高(埼玉)時代の恩師・野本喜一郎監督が礎を築いた浦和学院高で指導者となり、27歳から30年にわたって監督を務め春夏22度の甲子園出場を果たした。一発勝負のトーナメントで激戦の埼玉を勝ち抜くため、大事にしたのが「勝利を目指しながら、人間力を向上させること」で、「目標があって勝利を求めるには、明るく厳しくないといけない。目標が高ければ高いほど、自分を律する厳しさが求められる」と訴えた。座右の銘の4条件、やまびこ打線を育てた池田高(徳島)の蔦文也監督から学んだ「良い選手を育てる。良い指導者。良い環境。最後に一番大切なチームワーク」も紹介した。
左腕・小島和哉(現ロッテ)らを擁して成し遂げた13年春の全国制覇につながった秘話も披露。11年の東日本大震災後、冬の被災地に在任中の11年間、ボランティアとして通い、津波で崩壊した町のがれき処理などを通して「仲間の大切さ、命の大切さを学びました。自分たちがいかに恵まれているか」と再確認。色紙に記していた「NEVER GIVE UP」の横断幕を多数の死者を出した被災地で見つけ、「勝者は常に諦めない、でなく、生きることを諦めてないんだ」と衝撃を受けた。「野球をやってて勝ち負けあるけど、命までは取られない。試合前に緊張するけど、大舞台だからこそ、野球ができることが幸せだよね。もっと楽しまなきゃね。応援してくれる人たちに勇気与えなくちゃね、そんな気持ちになれた。その経験を1年から3年間やった世代が初優勝した」と明かした。
約1時間の講演の最後に、メッセージ。「人生は一生という時間をかけたドラマです。野球のゲームはそれを2時間に凝縮したドラマです。なので普段の生活感が色濃く出ている。生活のスピードがそのまま野球に出る。それは意識してください。野球で勝ちたいと思ったら、生活のスピード、生活感(が大切)。これって予知、予測ですから、そうやって考えてやってください」と、定員300人の会場をほぼ埋めた来場者に金言を残した。