社会人野球の千曲川クラブは11日開幕のJABA富山大会(富山市民球場)で2025年の公式戦が始まる。引退・退部で14人がチームを去り、新たに12人が加入し、今季も選手だけで35人の大所帯。新主将の重責を担う石渡大成内野手は「チームをまとめる力はない。しゃべれないですし、姿勢で引っ張るしかない」と背伸びせず、これまでのキャリアを生かしながらけん引していく決意だ。東京都出身。東海大甲府(山梨)から進学した国際武道大(千葉)でも主将を務め170人もの部員を束ねた経験を持つが、「学生時代はひと言声をかければ向いてくれた。社会人はいろいろ経験した選手がいる。仕事もあってまとめるのは難しい」と違いを十分に承知。それぞれの職場で仕事をしながら白球を追う者が集まるクラブチームの宿命を肝に銘じ、「副主将と話し合いながら、選手間の意見を取り入れていきたい」と前を向く。
社会人9年目。選手としても新境地を開く。扇の要として活躍してきたが膝の状態が思わしくなくここ2年は控えに甘んじていた。昨季からは、台所事情に加えて勝負強い打撃を生かすため、高校時代に経験した内野手にチャレンジ。今季は、「新しいことに挑戦しつつ、視野も広げたい」と西武入りした大砲・古賀輝希の後を継ぎ「4番・三塁」で出場している。打線の中心的ポジションとなるが、3、5番を打っていた豊田航平、5番・新井仁盛の主将経験組も引退したことでクリーンアップは総入れ替え。「絶対的な中軸がいなくなった。長打はない。いかにノーヒットで点を取ることが大事になってくる。自分は、4番目。後ろにつなぐ。どの選手も打順関係なく同じ意識でやっている」とつなぎの打線の象徴として役割を全うしていくつもりだ。
チームが目指しているのは、東京ドームで開催される都市対抗と京セラドームで開催される日本選手権の初出場。都市対抗は北信越予選準優勝3度、日本選手権は最終予選の全日本クラブ選手権準優勝2度と計5度あと1勝で泣いた歴史があり、「2大ドーム出場」は、まさに悲願だ。石渡主将もそれぞれの決勝で最後の打者となった経験が1度ずつあり、懸ける思いは強い。8月には31歳となるベテランは「うちは守りメーンに取り組んでいる。目の前の試合にしっかり勝っていきたい」。野球に理解のあるナガオカ製作所で働きながら、副主将の圀府寺輝外野手、花岡大輔内野手と手を携え、一戦必勝で今季こそ社会人選手憧れの地に立つ!
(スポーツライター・高地浩志)