全日本バレーボール高校選手権(春高バレー)県ファイナルラウンドは最終日の10日、長野市ホワイトリングで男女決勝が行われた。ともにフルセットの熱戦の末、男子は松本国際が岡谷工を破り2年ぶり12度目、女子は東京都市大塩尻が松商学園を振り切り7年連続12度目の優勝を飾り、来年1月5日から東京体育館で開催される全国大会出場を決めた。
▽男子決勝 松本国際 3(25―19)2 岡谷工
(22―25)
(19―25)
(25―22)
(15―12)
1時間45分の激闘をものにした松本国際の壬生裕之監督は「苦しかったですね」と振り返った。セットカウント1―2で迎えた第4セットは16―19とリードされ、「3-1で負けゲーム」と腹をくくった。だが、選手たちはしぶとく磨いてきたスタイルを貫いて逆転勝利をつかんだ。
高さはなく超高校級のアタッカーもいないチーム。それでも全国と勝負するにはどうするか。1年前に岡谷工に敗れてから取り組んできたのは、相手に的を絞らせず前衛3人が常に速い攻めを展開する2枚セッター制だった。アタッカーで入学した小林智哉と西村堅志がダブル司令塔に指名された。中でも小林は主将の重責も担いながら試合の流れを読んでトスを上げ、前衛ではセンター、レフトからの小気味いい速攻に加えてサーブレシーブもこなすまさにオールラウンダーとしてけん引。この日、アタックはチーム最多タイの16得点、サーブレシーブ成功率はチーム最高の85・3%をマークした。
難易度の高い戦術だが、小林は「一番ボールにさわれる。やっていて楽しい」と喜びを感じている。完成度は「まだ半分」と感じており、伸びしろはたっぷり。ベスト8で敗れたインターハイからさらなる前進を期している。
女子決勝 都市大塩尻 3(23―25)2 松商学園
(25―15)
(25―22)
(16―25)
(15―8)
3年生の意地だった。第4セットをワンサイドで失い、持ち込まれたファイナルセット。都市大塩尻のOP北堀未森主将は「2年生が思い切ってプレーできるようにトスをもってきて」とセッターの武井陽菜に要求した。言葉通りにライトから2連続で強打を決め、チームを鼓舞した。直後に2年生のOH今井絢菜が激闘の疲れから左膝を痛めて退くアクシデントに見舞われたものの3年生の涌井涼帆がカバー。6―6から2年生のOH清水美帆の強打などで6連続得点。最後は北森が1時間46分の大熱戦に終止符を打った。
手の内を知り尽くした中信勢同士の対決。力強いサーブに押され、本来の生命線であるセンター陣の攻撃が厳しいマークに遭った。今井一仁監督も「本当に苦しんだ試合だった」と明かしたが、親元を離れて合宿生活を送りながら夢を追う選手たちは土壇場で踏みとどまり、連覇を7に伸ばした。
この日、選手たちは右手に「勝」、左手には好きな言葉を書いて決戦に臨んだ。北堀が左手に記したのは「心」で、「心を強く持って戦おう」という決意を込めていた。昨季のチームはインターハイで準優勝した実績があったが今季はインターハイ、国スポとも目立った成績はない。「この試合で強くなった。ここから一か月かけて、全員で日本一を狙えるチームをつくっていきたい」。下級生主体のチームを束ねる主将は、苦闘の末にライバルの挑戦を跳ね返して得た財産をさらに膨らませて、集大成の舞台に乗り込む。